ブログ 牧田総合病院

 今回は当ブログ内で6月に紹介している脳血流シンチグラフィの発展版、「負荷」脳血流シンチグラフィを紹介します。この検査は普段行われる脳血流シンチグラフィに加えて、脳の血管を薬によって拡張させ、どのくらいの血流量が流れるのかを調べるものです。6月に紹介した認知症の診断を目的とした検査とは異なり、主に脳卒中を起こした患者さんに対して行われる検査です。

負荷に使用する薬剤は「アセタゾラミド」(商品名:ダイアモックス)といいます。この薬剤は主に緑内障やてんかんに使用されるもので、血管を拡張させる効果があります。これを利用して脳梗塞やもやもや病の「脳循環予備能」を出すことができます。「脳循環予備能」とは脳の血流量が低下したとき、血管径を太くして入ってくる血流量を増やそうとする働きのことをいい、この検査の場合ではアセタゾラミドを投与することによって脳血管を拡張させることで脳循環予備能を見ることができます。正常な血管では血管が拡張するため血流量が増えるのに対して、脳梗塞やモヤモヤ病の患者さんは血管がすでに開ききっているため、脳血管の拡張を促してもそれ以上の太さにはならず血流量も増えません。この違いを見ていくのがこの検査の目的です。

 上の画像のように1つの検査の中で安静時と負荷時の画像を得ることができ、それらを比較することができます。安静時と負荷時で比較してみると安静時の画像ではわかりにくかった色の違いが負荷時の画像ではよりくっきり見ることができます。

またSEE MAPと呼ばれるツール(下画像)で解析していくと脳虚血のステージ分類をすることができ、脳血管のバイパス術などの術前検査に有用となります。

このグラフのStageの数字が増えていくほど脳循環予備能が悪くなります。

  • 検査の手順

検査の流れは次のようになります。

  1. 来院→前処置
  2. 注射
  3. 撮影
  4. 撮影後
  1. 来院→前処置

来院されたらまずトイレに行っていただきます。これは負荷時に使用する薬剤のダイアモックスには利尿作用があり、検査時間が約60分と長く途中でトイレに行くこともできないためです。またもし検査中に尿を我慢できなくなった時のためにおむつやリハビリパンツの使用をお願いしています。

 2.注射

脳血流シンチグラフィと同じように検査室のベッドに仰向けでアイマスクをして横になります。常に患者さんの状態を観察しながら行うため、血圧計、SPO2モニタ、心電図モニタを装着していきます。準備できたら右腕の静脈(右腕に麻痺や注射できない理由がある際は左腕)に注射をしていきます。またこれから先は機械がすぐ顔の前にあるため、アイマスクをしていて前は見えませんが、動かないでいただくことが非常に重要です。

 3.撮影

針の入っている場所から放射能を含んだ薬剤を投与し2分間の撮影を行います。この撮影でどのくらいの血流が脳に行っているのかを測ることができます。その撮影が終わると静脈に入っている針はそのままで撮影開始から5分後より次の撮影を行います。ここから始まる撮影が約50分かかる長い撮影になります。放射能を含んだ薬剤を入れてから10分後に負荷薬剤のダイアモックスを同じく静脈に投与します。そしてさらに10分後にもう一回放射能を含んだ薬剤を投与し、最後まで撮影し続けます。もしこの間で尿意が出ても動くと検査が成り立たなくなってしまうため、おむつをしている場合はそれにしていただきます。

 4.撮影後

 約1時間の撮影が終了したらまず血圧を測定し、撮影前と比べて変わりがないかを確認します。それが終了し次第身体に着けている心電図モニタやSPO2モニタを外していきます。またダイアモックスを使用した方は体調の変化がないかを検査後2時間確認させていただきます。この際も部屋を移動して心電図モニタなどは装着したまま行います。

当院では脳血管のカテーテルを使用した治療や検査を積極的に行っています。気になるようなことがあれば当院の脳神経外科にいらしてください。

放射線部 U