はじめに|本資料の目的と活用方法

本資料は、かかりつけ医が日常診療で活用できる慢性腎臓病(以下CKD)診療の考え方と実践ポイントを整理したものです

2025年12月に開催された「かかりつけ医が押さえておきたいCKD診療~明日から使える治療のヒント~」講演会(開催地:東京)をもとに、CKD診療の実践ポイントをスライド形式で掲載し、腎臓専門医が、プライマリケアの現場で役立つ視点(評価・治療・紹介の考え方など)を中心に解説しています。

文責:渡辺誠 mwatanabe@makita-hosp.or.jp

各スライドに補足を加えていますので、講演を追体験するようにご覧ください。

ご注意

本内容は診療の一般的情報を目的としております。
個々の患者さんの診療判断は各医療機関・担当医の裁量で行ってください。

CKDの現状と診断・重症度基準

増加するCKDの現状を踏まえ、診断基準と重症度分類、専門医紹介の考え方を整理します

CKDは全世界で増加しており、日本では、2000万人以上、成人の5人に1人と言われています。
(日本腎臓学会, Ed., CKD 診療ガイド2024. 東京医学社, 2024.)

CKDの診断基準、CKD重症度分類(CGA分類)を以下にお示しします。

診断基準(上左表)はシンプルで、「GFR<60mL/分/1.73m2」または「尿検査や形態異常」が「3ヶ月以上持続する」ことです。上右表は重症度分類で、表の右下(ピンク色の部分)に向かう程、予後(腎不全や死亡など)が悪くなります。腎臓専門医への紹介は重症度分類をもとにされており、主に「オレンジ色」と「ピンク色」に合致する患者が「紹介すべき患者」とされています。

CKD診療は有病率が多く慢性疾患であるため、かかりつけ医(腎臓非専門医)と腎臓専門医の連携が重要になります。しかし連携には、多くの問題が存在しています。

CKD連携の問題点と2つのCKD病態

CKD診療における連携の問題点を、「2つのCKD」という視点から解説します。

こちらの漫画をご覧ください。

この例のように、腎臓専門医へ紹介したものの、「特に対応してもらえなかった」「今後どのように対応すればよいのか分からない」と感じた経験はないでしょうか。

このような状況が生じる背景には、腎臓専門医とかかりつけ医の間で、CKDに対する認識にギャップがあることが挙げられます。

私は、その要因として、「CKDには2つの病態が存在する」という点、そしてその認識が十分に共有されていないことが関係していると考えています。

ここでは2つの病態をCommunity CKDComplex CKDと呼称します。(筆者命名)

Community CKDComplex CKDの特徴は上記スライドの通りです。
実際先生方の外来には、腎機能は悪いがCKDの進行は緩やかで、透析のリスクよりも脳梗塞や心筋梗塞などのリスクの方が高い患者さんが、沢山いらっしゃると思います。

この2つの病態は区別するべきです。

理由は、「Community CKDはかかりつけ医が中心に診察すべき病態」で「Complex CKDは腎臓専門医が診察するべき病態」だからです。

前述の学会の診断基準や紹介基準は、この2つのCKDを区別するために存在していると言っても過言ではありません。

Community CKDComplex CKD の状態は、病状の変化や治療により入れ替わり、予後は明らかにCommunity CKD の方が良好です。

そして、それぞれの立場での治療の目標は、次のように言い換えることができます。

  • 我々腎臓専門医の目標
    Complex CKDCommunity CKDの状態にすること」
  • かかりつけ医の目標
    Community CKDの状態を維持してComplex CKDにしないこと」

次のスライドは、先ほどの漫画にコメントをつけたものです。 お互いの考えがわかりやすいのではないでしょうか?

つまり、腎臓専門医は、「Complex CDKを見つけよう」としていて、もし「Community CKDなら、かかりつけ医に診察を続けていただきたい」と考えているわけです。

2つのCKDを元にした当院の紹介基準

前項の考え方をもとに、当院で用いている紹介基準と重症化の捉え方を示します。

当院でも Complex CKD の患者を紹介していただきたいという方針の元、上のスライドに示す独自の紹介基準(絶対紹介基準)を作成しております。

また、重症化を判定するために、次のような「重症化基準」も設けております。

  • CKD絶対紹介基準 ※1
    eGFR<45mL/分/1.73m3 かつ・又は 尿蛋白(±)が持続(2回以上測定して複数回合致すれば判定)
  • CKD重症化基準 ※2
    1年以内のCGA分類のステージの悪化・尿蛋白の増加、血圧・血糖などの管理困難

注釈

※1「絶対紹介基準」は単なる目安であり、学会の紹介基準に準じても問題はありません。
※2「重症化基準」は「半年でCGA分類のステージがG3aからG3bに悪化した」とか、「3ヶ月前から、尿蛋白が(―)から(±)になった」とか、「先月から浮腫がひどくなった」などを想定。厳密ではなく、かかりつけ医の判断が優先されます。

非腎臓専門医のためのCKDケア簡易チャート

かかりつけ医が主体となってCKDを管理するための、実践的な診療フローを紹介します。

上のスライドが当院で使用しているCKDケア簡易チャートです。
対象の患者さんは、「CKDのリスクがある」または「CKDと診断された外来患者」です。

特徴
  • CKDが診断されていない状態(「No CKD」)の記載
  • 各フェーズで「責任医師」を明確化
  • 腎臓専門医はComplex CKDのみ対応
  • 「絶対紹介基準」、「重症化基準」による紹介基準の簡易化・明確化

単純にeGFRで分ける必要はなく、かかりつけ医がCommunity CKDであると判断したなら、かかりつけ医が責任をもってCKD管理・治療を行なっていただければ良いと考えています(実臨床では、GFRの低い患者様をかかりつけ医が診察していることも多いと思いますし、それは問題ないと考えます)。

実際の運用
  • CKD診断フェーズ(No CKD)
    責任は健診医。
    CKDリスクの高い患者(糖尿病、心不全、高血圧など)に積極的にGFRと尿検査を行い、CKD患者を見逃さないようにする。CKDの診断がついたら、「CKDリスク確認フェーズ」へ。
  • CKDリスク確認フェーズ(Community CKD)
    まずリスクの層別化をする(「絶対紹介基準」、学会紹介基準を利用)
    • Complex CKD疑い:腎臓内科へ紹介
    • Community CKD:かかりつけ医が検査・治療継続。検査が「重症化基準」を満たせば、Complex CKDと判断し腎臓内科紹介
  • 二人主治医フェーズ(Complex CKD)
    腎臓内科はComplex CKDかどうか診断。
    Community CKDならば、かかりつけ医に戻す(CKDリスク確認フェーズへ戻す)こともある。必要時に「二人主治医体制」で診療。

2つのCKDを元にした腎保護治療の考え方

Community CKDを維持することを目的とした、腎保護治療の基本的な考え方を解説します。

上のスライドは、糖尿病関連腎臓病(DKD)の腎保護治療薬についてまとめています。

私は腎保護薬を「ワンダー・スリー」と呼んでいます。「ワンダー・スリー」とは、ACE阻害薬/ARB、SGLT-2阻害薬、ns-MRA(非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)の3種類の基本薬(ベッシックドラッグ)のこと示します。この「ワンダー・スリー」を基本に、必要時「GLP-1受容体作動薬」を追加します。この4種類の薬を合わせて、一般に「4本柱(フォー・ピラー)」と呼ばれています。

これらは、適した使用により腎保護が期待できる薬です。

2つのCKDの考え方では、「ワンダー・スリー」の役目は、Community CKDComplex CKD にしないこと、と言えます。Community CKDの段階で「ワンダー・スリー」を使用することで、Complex CKDを、ひいては透析患者様を減らせる可能性があると考えております。

この「CKD確認フェーズ」の責任医師は、先生方である「かかりつけ医」となります。

そのため、ぜひ「ワンダー・スリー」の使用可否についてご検討ください。

疑問点などございましたら、腎臓内科医までご依頼ください。 Community CKDとComplex CKDを鑑別し、ワンダー・スリーの治療方針の決定にも尽力させていただきます。

講演者プロフィール

本講演の演者および、本資料の執筆者を紹介します。
  • 渡辺 誠 医師(腎臓内科)
  • 専門:腎臓内科

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