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午後

診察時間

水曜 : 9:30 ~ 12:30

木曜 : 9:30 ~ 12:30

金曜 : 9:30 ~ 13:00

<痛みの治療について>

身体が損傷されたりすると、末梢神経に痛みの信号が生じて、脊髄、脳へと伝わり、脳で「痛み」として認識されます。これを侵害受容性疼痛と呼びますが、損傷が治るとともに消失します。ところが、痛みを伝える神経自体の損傷や疾患でも、痛みが生じることがあります。「ビリビリ」「チクチク」「ジンジン」といったしびれ、電気が走るような痛み、刺し込むような発作的な痛み、患部に少し触れただけでも飛び上がるような痛みなどが出現することがあり、これを神経障害性疼痛と呼びます。神経障害性疼痛の痛みが長期間持続してしまうことがあり、生活の質(QOL;quality of life)も大きく低下してしまいます。また痛みは身体の警報アラームであるとともに主観的かつ不快な体験です。時に恐れや不安といった感情に巻き込まれて冷静な判断を失いかねないこともあります。まずは患者さんとしっかりとコミュニケーションをとりながら病態把握に努め、病状をしっかりと理解していただけるように説明し治療を進めていくように心がけています。

<ニューロモデュレーションとは>

神経系に生じた機能異常を薬剤や微弱な電流を流すことで正常な機能に回復せしめる治療法です。将来的には治療技術やデバイスの革新によって この範疇に含まれる治療法はさらに増加すると見込まれています。当センターでは脊髄刺激療法(SCS)とバクロフェン髄腔内持続注入療法(ITB療法)を行っています。

【対象とする疾患】

①痛みに対する治療 

片頭痛、緊張型頭痛、後頭神経痛、三叉神経痛

頸椎症、頸椎椎間板ヘルニア、頸椎捻挫、肩関節周囲炎

腰部脊柱管狭窄症、変性すべり症、腰椎分離症、腰椎椎間板ヘルニア、椎体圧迫骨折

脊椎手術後の痛み、帯状疱疹後神経痛

②痙縮に対する治療

脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、多発性硬化症、神経変性疾患、脳性麻痺などによる痙縮など

①痛みに対する治療

【神経ブロック・高周波熱凝固・パルス高周波療法】

X線透視下装置を用いて、あるいは超音波装置(Fig1)を用いて行ないます。

神経ブロックは痛みの原因と推測される神経に局所麻酔薬を注入して神経の伝達機能を遮断する方法です。神経伝達機能の遮断のほか、診断的な意義、痛みの悪循環の遮断、さらには血行改善なども期待できます。

(Fig2)

高周波熱凝固は高周波エネルギー(70~90℃)で、神経を構成しているタンパク質の一部を凝固して、神経の働きを長期間抑える方法です。遮断された神経が再生するまで効果が持続します。

また、パルス高周波療法とは、高周波電流を42℃以下で間欠的に通電することで電場を発生させ、神経組織の変性を起こすことなく神経に影響を与えることで痛みの緩和を図る方法です。

【経皮的椎間板摘出術】(Fig3)

(Fig3)

椎間板ヘルニアに対する治療法です。X線透視装置を用いて経皮的に椎間板内にカニューレを挿入後、デバイスを使用して髄核蒸散をおこない(椎間板減圧)、さらに高周波電流により繊維輪を凝固する(繊維輪形成)ことにより痛みの緩和を図る方法です。

【硬膜外腔癒着剥離術】(Fig4)

(Fig4)

X線透視下装置を用いて経皮的にスプリングガイドカテーテルを硬膜外腔に挿入し、カテーテルによる物理的剥離や生理食塩水による液性剥離を行うことで癒着を剥離し痛みを緩和させる方法です。特に脊椎手術後に残存する痛みや椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症などに対して行います。

【脊髄刺激療法(SCS ; Spinal cord stimulation) 】(Fig5)

(Fig5)

痛みの伝わる経路がある脊髄の硬膜外という場所に電極を留置して微弱な電流を流すことにより痛みをやわらげる治療法です。局所麻酔下で行うので、高齢の方や合併症などで全身麻酔が難しい方も安心して受けられる治療法です。主に腰下肢痛や頸肩腕部痛を対象としていますが、脊椎手術後に残存する痛みのほか、帯状疱疹後神経痛、PAD(閉塞性動脈硬化症)、難治性狭心症などにも効果があるといわれています。まず治療効果があるかどうか試験刺激;トライアル(リードとよばれる電極を試しに留置)を行います。その効果を確認してジェネレーター(体内刺激装置)を埋め込むかどうかを決めて手術を行います。

②痙縮に対する治療

脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、多発性硬化症、神経変性疾患、脳性麻痺などは大脳から脊髄にいたるまでの中枢神経系の障害;いわゆる上位運動ニューロンの障害です。上位運動ニューロンが障害されると下位運動ニューロンの興奮性が増大してしまい、「痙縮」とよばれる痛みを伴う間欠的または持続的な過剰な筋収縮を生じてしまいます。

【ボツリヌス療法】(Fig6)

(Fig6)

ボトックスはボツリヌス菌から産生される毒素を有効成分とする製剤ですが、神経筋接合部におけるアセチルコリンという神経伝達物質の放出をブロックすることにより筋収縮を抑え痙縮を緩和する治療法です。局所的な筋肉注射ですが、痙縮を及ぼしている筋肉を見極め、超音波エコーと電気刺激にて筋肉を同定しながら行います。

【バクロフェン髄腔内持続注入療法(ITB ; Intrathecal baclofen療法)】(Fig7)

(Fig7)

植え込み型持続注入ポンプを設置し、カテーテルと接続し、脊髄髄腔内に抑制性神経伝達物質 GABA の誘導体であるバクロフェンを持続投与する治療法です。バクロフェンは抑制性ニューロンに働きかけ下位運動ニュー ロンの興奮性を低下させることで痙縮を緩和させますが、経口投与よりも髄腔内投与の方が有効性や安全性が示されています。まずはスクリーニングテスト(バクロフェンによる抗痙縮効果判定)を実施してからポンプ設置する手術を行います。